加藤あんなについて知っているニ、三の事柄

変ゼミという基本お下劣ナンセンス漫画にもう一つの流れ、「連続した恋愛ドラマ」を生み出すこととなった“加藤あんな”という登場人物について覚え書きをしておきたい。

まだ物語すべては幕を閉じていないし、作者自ら作品解説というのもみっともない事なのは重々承知しているが、この覚え書きを踏まえた上でも楽しんで貰えると思う。

 

加藤あんなが初登場するのは第1巻#08。記憶が定かではないが、この頃はまだ掲載誌である『モーニング・ツー』が隔月刊だったかもしれない(創刊当初は季刊誌だった)。

その頃変ゼミの人気のバロメータを計るのはネット上の書き込みくらいしかなく、2chのモーツースレなどではほぼ酷評が占めていて、僕も天下の講談社で初めてやる仕事がこんな漫画の焼き直し(元エロ漫画)とは失敗した…と、連載を続けるのが苦痛でならなかった。

それでもなんとか続投するモチベーションを得ようと、新キャラ投入という苦肉の策で誕生したのが“加藤あんな”だった。

 

キャラクターメイキングの最初のキーワードは「ヤンキー」「方言」「処女」。物語(というか舞台)内での立ち位置(ロール)は不明。方言は作者にまったく縁もない金沢弁(関西弁じゃ普通すぎるな程度の考えで、では僕もよく知らない方言は何処だ? くらいの本当に適当な考え)。本当にそれ以上の設定はほぼ考えていない見切り発車だった。

 

見た目は赤毛のサイドポニー。これは当時放送されていた『ダンドリ。』というTVドラマで加藤ローサがやっていたのが可愛くて真似をした。加藤ローサは名前の元ネタにもなっている。

名前のもう一人の由来が土屋アンナ土屋アンナは映画『下妻物語』でヤンキーをやっているがそれよりまず、別の映画『茶の味』に出演していた土屋アンナを僕は最初加藤ローサと勘違いして観ていた。その連想から『下妻物語』のヤンキーを思い出し、では二人の名前をくっつけて“加藤あんな”にしようと思いついた。

ちなみに“松隆奈々子”は松嶋菜々子松たか子(本名:隆子)である。

 

 

 #09までの収録を第1巻として発行する事が決定したが、僕のモチベーションは回復せず、早々に連載も休止して単行本もvol.1とはなっているがその後は未定で別の漫画を描き始めるつもりでいた。担当も合意だった。

そんな間際にあんなを出してしまった事は、心苦しいというよりも、情けなかった。

 

ところが、単行本第1巻が予想に反して売れてしまう。僕個人としては作品外のところで続投を余儀なくされた。

しかしあんなの雑な設定は連載が続くほど、どんどん自分の首を締めていった。記憶喪失のような伏線は張ってみたものの、どうにも落とし所が思いつかない。不勉強な金沢弁も赤面レベル。

「こいつ(あんな)退場させたい…なんで金沢弁………殺してえ…」

そうは思ってもさすがにメインキャラを突然殺せるような作品世界ではないし、意味不明なまま突然退場というのも許せない。しかし邪魔。使い所ない。消したい。そして閃いた。

 

「本当に殺すのは無理でも人格なら殺せるんじゃね?」

 

そうして第3巻収録の“最初の人格変容”物語を思いついた。

変ゼミでやることじゃないだろうと思ってはいたが、この展開はある程度の支持を得たし、僕も達成感があった。

「金沢弁まで、僕ではなくあんなの付け焼刃だったという設定で逃げてやったぞ!」

 

だが、今度はヤンキーあんなではなく“クールあんな”に苦しめられることとなる…。

ヤンキーあんな以上に扱いが難しいキャラになってしまった。端的な特性がなく、性格も嫌な感じ。

蒔子との絡みでなんとか逃げ道を模索するがうまく行かない。肝心の市河ともこいつとはいい感じにしづらい。ヤンキーあんなに戻ってくっつくとか、そんなご都合展開も許せないし。

 

「………殺してえ…」

 

というわけでもう一度人格を殺す物語を作った(第7巻収録)。

なんと作者の都合で二回死んでるんですね、あんなさんは。

この二回目は前回以上にやたら複雑で、漫画としてはうまく表現しきれなかった。

 

(未完)